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甘恋〜こ、こんなのあり?〜

第19章 知らない雅の姿

屋敷に着くと、勝手に出て行ったあたしを叱る陸が現れた。


「お前行ってくるねー!って言ってさっさと行くなよ!ったく…ん?」


でもあたしたちの表情の曇り具合に気付いたのか、叱るのはやめた。


「大広間に2人とも来い。話がある」


繋いでいた手を離した雅は、そう言って大広間に向かった。


陸は不思議そうにしながらも雅のあとを追う。

あたしも、彼の後ろを歩いた。


「俺にとって、心乃や陸は初めて言いたいことを言える奴だったから…


だから、陸にも話す。


お前は気付いてないだろうが、俺にとってお前はなんでも言える奴だからな」


「雅…」


雅が、あたしたちのことをそんな風に思っていてくれてたなんて…


なんだかこみあげるものがあった。


「俺の親父が金持ちなのは知ってるよな。

こういう社会にいると英才教育ばっかり受けさせられんだよ」


やっぱり…お金持ちの世界って、そういうものがあるんだ。


「親に敬語で話すなんて、それが普通じゃないって知ったのは中学過ぎてからだった。


その頃から、俺は自由になれるときがずっと欲しかった」


親にも敬語…

その他の時間は英才教育を受けるだけ。


そんな世界の中で生きてきた雅は、想像もできない孤独を感じていたことだろう。

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