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雅の彼女…千鶴さんの話を聞いて、あたしはずっと思ってたことがある。


どうして彼女がいると知っていたのに、雅はあたしに優しくしてくれてたんだろう。



守ってやる、なんて優しい言葉も


バカだな、って笑うあの笑顔も


手を繋いだ温もりも…



まるで恋人にするような仕草。


でも、雅は知っていたはず。

自分には婚約者がいること。


それなのに…


「いままでの雅のあたしへの接し方って、なんだったんだろうって思ったら…


雅はどうして…


婚約者がいたのに、あたしのことを……」


だんだんと、張り詰めていた気持ちが露わになっていた。


次の瞬間、陸はあたしの体をしっかりと抱きしめていた。


「あいつがお前にしてきたことがなんなのかは知らねぇけど…

嘘や冗談でしてたことのはずはねぇから！


だからー…泣くな」


そう言って、頬に伝う涙を拭う陸の手。


子供の頃も、友達と喧嘩して泣いてたときに陸がこうやって泣き止ませてくれてたっけ。




『ちゃんと仲直りすれば大丈夫だから！

泣くなよ！


お前は悪くねぇから！！』



あの頃と変わってないんだ…あたし。

なんだかおかしくなってきて、あたしは自然と笑っていた。