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甘恋〜こ、こんなのあり?〜

第6章 メイドのお仕事①

部屋の中はたくさんの本が棚に並べられていて、その他にあるのはベッドと机とその上にあるパソコンくらい。

そして部屋の中心には大きなソファ。


あとはあまり目立つものはなくて、意外と質素なんだなと思った。


雅はというと、ソファに腰掛けたまま本を読んでいる。


「あ、あの…あたし、寝ちゃって……」


「そうみたいだな」


本に目を向けたまま、冷たく言い放つ雅。

あたしが寝ている間に布団をかけて、『おつかれ』って声をかけてくれたのは…雅じゃないの…?


曖昧な記憶の中でも覚えてるのに、それが夢だったのかと思わされるくらい冷たい、彼の表情。


「布団をかけてくれたのは、雅じゃないの…?」


核心をつくために聞いてみる。
すると…


「あぁ、そうだけど。
スースー寝てたから、起こしても仕方なかったしな」


未だに本に目を向けたままの彼。

表情は…やっぱり冷たい。


もしかしたら、クビ…かもなぁ。
当たり前だよね。

でも、どうしてクビにされてあたしはこんなに悲しくなるんだろう。


お父さんからの頼みだから?

でも、あたしがクビになってもお父さんがクビになるわけじゃないし。


なんでだろう。ただただ、雅の冷ややかな表情が悲しくて…


「……っ」


気付けば、頬から涙が伝っていた。


「!!なんでお前泣いてんだよっ?」


やっとこっちを見てくれた雅は、いきなり泣いてるあたしに驚いてる。

あれ……

嫌いになったから、目も合わせてくれないんじゃないの…?

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