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陽だまりの仮面 -嘘-

第7章 夕陽と泪味

「そっかぁ!何もなかったかぁ!」


なんて、安堵の息を漏らすクソ木山。


“何もなかった”


この言葉の定義って、人それぞれだよね?


誰だか既に忘れちゃったけれど。

誰だか知らない人に、扉ドンされちゃったけれど。

花木君に、机ドンされちゃったけれど。


それも、キスや…あんなことやこんなことに比べれば



「うん、何もなかったよ」


何もない事だと、思う。

あたしにとっては大事件に等しいけれども。



何もなかったという言葉を重複したのが良かったのか、すっかり気分上々の木山は調子に乗ったのか



「じゃぁ、今日一緒に帰……」


言葉を放った瞬間



「琉愛、チャイム鳴りますよ」



花木君が遮るようにして私の名前を呼んで席に座るよう促す。


―――けど。


花木君があたしの事を“琉愛”と呼んだ事に対してクソ木山は


「い、い、い、○×▼※~~~!!?」


何言ってんのかさっぱり分からない奇声に近い声を上げて。


花木君とあたしと木山の会話をちゃっかり聴いてたクラスメイトから教室中に響き渡るどよめき。


そんなモノ、何のそのの花木君はしれっと椅子に座って



「ほら?琉愛?」


「あ、はい!」



私も言われるがまま、花木君の隣りの自分の席に座った。





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