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陽だまりの仮面 -嘘-

第7章 夕陽と泪味

あたしの必死な声を聞いて、花木君は少しの間黙ったままあたしを見下ろしてたけれど


「そうですねぇ」


納得したのか、溜息混じりに一言。



「じゃぁ、」


「?」


「因みに、山田風太郎の何の作品だと思ったんですか?」



あたしの顔を覗き込みながら問う花木君。

どれだけこれがニアピンなのかは分からないけれど


「こ、甲賀忍法帖…?」


と答えた瞬間



「実に惜しいですねー」



目を細め、優しい眼差しであたしを見る花木君にドクンと鼓動が跳ねる。



「惜しいんだ?」


「いい線行ってて惜しいですけど、」



言葉を放ちながら花木君はベンチから立ち上がり



「でも、違うので。


約束通り罰ゲームですね?」



あたしの隣りに密着気味に座り直して



「琉愛?」



微笑する顔が、何だかとても艶やかに見えてしまって



心臓がハンパなく警鐘の如くドキドキして


一気に顔全体が熱くなる。







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