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陽だまりの仮面 -嘘-

第8章 夕陽と泪味 ②

ふわっと花木君の“香り”が纏う瞬間、全身の血が一気に沸騰し始めて。


「大丈夫、ですか?」


橘に向けてた冷たい低い声じゃなくて、いつもの優しい声色とあたしの顔を覗き込む綺麗な視線に


コクコクと頷くしか出来ない、あたし。


そんなあたしに花木君はクスッと笑って、あたしの腕を掴む手を肩へと移動。

あたしをグッと抱き寄せて、再びさっきの鋭い視線を橘に向け



「は、放せよっ!!」


「僕の話はまだ終わってないので」


「っっ、!!」



反対の手で掴んでた橘の腕を捻り上げ



「君が何と思おうと勝手ですけど。

君が僕と彼女を認めないのも君の勝手ですけど


次、こんな真似したら申し訳ないですが、」



「…っんだよ!!」



「この腕、容赦しないですから」



「くっ……‼‼」



花木君のゆっくりと、そしていつも以上に丁寧に聴こえてしまう敬語が更に威圧感を与えてて


あんだけバカにしてた橘も、まさかの花木君の態度に



「チッ!」



舌打ち程度の反抗が精一杯みたい。



「それは、理解して貰えたと解釈させて貰っていいんでしょうか?」



「っっ……ったよ!!分かった!!」



橘はさっきまでの勢いが嘘のように半ギレのような、完全逆ギレのような。

どーとでもなれとでも言わんばかりにパッと離された腕を上げて




THE 降伏ポーズ。




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