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陽だまりの仮面 -嘘-

第8章 夕陽と泪味 ②

そんなあたしの右手をギュッと握って


「そろそろ予鈴なので、行きましょうか?」


優しく首を傾げる花木君に


「うんっ」


ニコリと笑って、前を歩く花木君の後ろを

花木君の手を握ったまま歩き、図書室を出た。


手を繋いで真横に並んで歩くのが何だか少し恥ずかしくて。

一歩後ろを歩くあたしの手を離す事なく繋いだまま歩く花木君は
傍から見たらあたしを引っ張ってる風にも見えてるかもしれない。

右手から伝う花木君の温もりに心臓の鼓動はバクバクするかと思いきや、何だか妙に落ち着いてて。


何だろう。


手を繋ぐなんて…、花木君と手を繋ぐなんて夢のまた夢の出来事で。

って、一緒に帰宅したりする事自体、夢のような出来事なんだけれど。

好きな人の温もりが伝うって、好きな人に手を繋がれるってドキドキ感ハンパないはずなんだけど

温もりが妙にあたしの心を落ち着かせてくれて。


なんだか、ドキドキというよりは、

廊下に射す陽気な陽の灯りと同じ、ほっこりと温かい気持ちに包まれてる。



なんだか、不思議な感覚…。



世の女性達は、好きな人と手を繋ぐ瞬間って



みんな、こんな気持ちなんだろうか……



なんて思いながら花木君と繋がってる自分の右手を凝視。





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