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陽だまりの仮面 -嘘-

第8章 夕陽と泪味 ②

花木君の温もりに触れながら歩く教室までの廊下。

暖かい、春が近い事を知らせてるような暖かい陽


恥ずかしくて。

照れ臭くて。

でも、温かくて。

何とも言えない気持ちに包まれる。




―――――けど……。




ふと、脳裏に横切る“ごっこ”の一文字。



……そう、だよね……。


花木君がこうしてあたしと手を繋いでくれてるのも

クソ橘から守ってくれたのも



“恋人ごっこ”中だから…なんだよね…。


あたしは花木君の、彼女“役”。

それ以上でも、それ以下でもないんだ。



そう思い出すと、さっきまでほっこり温かい気持ちだった心から一転。

ギュッと何かに握り潰されるような心の痛みに襲われる。


花木君との距離はたった1歩2歩程度の距離なのに、心はもんの凄く遠く離れてるように感じて。


花木君の優しさ。

時折見せる優しい微笑。

優しい仕草。

………キス…とか。


つい、勘違いしてしまいそうになってしまう。


……つい、忘れてしまう…。



“ごっこ”だ。



って事……。





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