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陽だまりの仮面 -嘘-

第9章 琉愛×仮面

あたしは目の前のアイスミルクティーが入ってるグラスを顔に当て、クールダウン。

ほんの少し残ってたミルクティーをストローで飲み干すと



「あんた、彼女役で満足してたらダメだよ?」



砂羽はあたしの手から、あたしの持ってたグラスをスッと抜き取り



「同じの?」


「あ、うん」



自分のグラスも持ってドリンクバーへ。


砂羽の背中を見ながらあたしは



“彼女役で満足”



砂羽の言葉に、軽く溜息が零れる。

と、同時に

ドクンと鼓動が揺れる。



彼女役で満足………。



好きな人相手に“彼女役”で満足する人なんて、居ないと思う。

だから、当然あたしも花木君の“彼女役”に満足してるわけじゃない。


でも。


“恋人ごっこ”という関係性には胸が痛むけれど


全く話掛ける事なんかできなくて。

同じ教室で隣りの席に居るのに、あたしと花木君の距離は北海道と沖縄くらいの果てしなく遠い距離感があって。

隣りだからチラチラ見るのが恥ずかしくて

結局、いつも花木君を見るのは彼が席を立った後ろ姿とか

とにかくあたしから離れた場所に居るのをチラッと盗み見する程度。


そんな日々を10年続けて来たあたしが、今は


『琉愛』


名前で読んで貰えて。


『帰りますよ』


一緒に下校出来て。


『ほら、行きますよ』


お昼も一緒に過ごせて。


『琉愛、おはようございます』



朝一。

花木君に逢える喜びに満足しちゃってるのも、確か。




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