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陽だまりの仮面 -嘘-

第10章 初デート

手を繋いで、歩く見慣れた街並み。

時折、暖かい春風に乗って香る“花木君の香り”にクラクラしてしまいそうになりながら、歩く街並み。


何でもないビルのそびえ立つ様や、行き交う人達の顔。

路の両脇に立ち並ぶお店達。


どれも、見慣れた風景なはずなのに

どれも、いつもと何ら変わらない街並なのに

いつもと違って、鮮やかに彩付いてキラキラして見えてしまのはきっと……


あたしが今、相当浮かれてるからなんだろうな。


なんて。




花木君と並んで歩く本屋までの路。

何か会話するわけでもなく、手はしっかりちゃっかり繋いだまま。

だけど、無言。



何か話さなきゃ……



って思えば思うほど焦りと、そして気の利いた会話なんて浮かんで来なくって。

それでも話さないと、つまんない女とか思われないかな…

なんて、今度はそれが心配になってきちゃって。

焦りと、まだまだ解けない緊張と、そして不安と。


3つが揃うと更に話せなくなってしまって、結局、無言。




―――――でも。




良いのか悪いのか分からないけれど…。


気付くと、この無言で歩く2人の空気感が好きになってて。

結構、今の空気感に満足しちゃってる自分が居て。


何か話さなきゃと焦り、考え、俯き気味で歩いてたあたしは、後半。


しっかりと顔を上げ2人を取り巻く空気感を愉しみながら、花木君の隣りを歩いた。





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