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陽だまりの仮面 -嘘-

第10章 初デート

痛いほど鼓動する心臓に耐えきれずギュッと目を瞑れば、五感が研ぎ澄まされるのか何なのか。

気のせいかもしれないけれど、右頬に何だか感じる花木君の温もり。

それが、余計どうしようもないくらいあたしを緊張へと導き


完全なる、直立不動。



「この惑星が……」


「う、うん…」



一生懸命、蒼い惑星について説明してくれるんだけれど

一生懸命、本に指を差しながら説明してくれてるんだけれど



花木君………ごめんなさい。


あたし


一切、頭に入ってませんっっっ‼



相槌打つのに精一杯なあたしに気付いたのか、気付いてないのか。

めちゃくちゃ近い位置に居た花木君はスッと離れ、自分が持ってた本を本棚に返し

あたしを見て、ニコリ。



「じゃぁ、行きましょうか」


「えっ、?」


「次、行きましょう」


「うん……?」



あれ?

本を買いに来たんじゃないのかな…?


行きましょうかってニコやかに笑う花木君の手には本なんてなくて。

あれだけ物色してた本は綺麗に全て元の位置。



「本、買わないの?」


「買いますよ?」


「ふーん……?」




本、持ってないのに本は買う??


え?何?



とんちか何かなの??



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