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陽だまりの仮面 -嘘-

第16章 2つの腕

…………っ、






既に授業が始まってる校舎は、シーンと静まり返り

時折、大声で誰かを注意する野太い先生の声が響き

向こうのグラウンドのほうからは、規則的な笛の音が校舎の間をすり抜け

あたしの鼓膜を震わせる。


外は、さっきまでは少し陰りひんやり冷えてた図書室内も

陽が照り始めたのか、ほんの少し温かくなり

大きな窓から入り込む陽も徐々に延び、あたしを優しく包み込むように


陽だまりの中へと誘い込む。



全ての音という音

暖かな温もり



それらは直ぐ近くで感じてるんだけれど……



今は…妙に遠くのほうで音がしてる錯覚。





大きく、温かな陽だまりに包まれながら

静かに差し出された2つの腕をじっと見つめる。





“あたし”を拒否した、腕



“あたし”を受け入れてくれる、腕






あたしはどっちの腕を今選択することが正しいんだろう…。





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