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陽だまりの仮面 -嘘-

第3章 美女とメガネ

悪い話じゃないと思いますが?


と首を傾げながら、淡々と言葉を放つ花木君の言葉に

あたしの心は、当然複雑。



―――――10年。



この、無表情で、且つ、あたしに一切興味を示さなかった彼からのまさかの言葉。

挨拶程度しか会話をした事がなかった彼との、初めての長い会話。




『で、でも……』


『?』


『は、花木君こそ…あたしなんかと恋人ごっこするのは…


……嫌なんじゃないの…?』



花木君は、あたしが転校して以来、周りのアホな男共と違って

全然近寄って来る事もなければ、話掛けてくることもなかった。

今だって、同じクラスで隣り同士の席だというのに交わす言葉は



“おはよう”



ごくごく普通の。

人間としては、当たり前に近い、ただの挨拶。


そんなあたしと




『花木君の方があたしと“恋人ごっこ”するの……』




嫌なんじゃないだろうか。








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