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陽だまりの仮面 -嘘-

第3章 美女とメガネ

夕暮れの、朱の陽が優しく街を染めて行く様を見つめながら



『…………。』


『…………。』



ただただ、黙って彼の後ろに乗ってるあたしと

ただただ、黙って自転車を漕ぐ彼。

時折、無言に耐えきれなくなって



『あ、あの…重い…?』


自虐的なネタで話掛けてみるも


『別に』


一言、返答。


会話、それにて終了。


その他にも少しあたしなりに頑張ってみたけれど


『ふーん』


『なるほど』


会話にならず、敢え無く断念。



実は、密かに今日ずっと気になってた事があって。

それを聞きたいがために、切り出しやすい雰囲気を作ろうと思って言葉を投げてみてるのだけれど


それらは全て、一言で返され、会話打ち切り。


一言返した後は、当然の如く花木君から言葉が何か投げられるなんて事は全くなくて



『………。』


『………。』




シ――――ン……。



自転車2ケツして、こんなにも相手が漕ぐ自転車の音が響いたのは、


人生初


だと思う。




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