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Sincerely

第3章 夢見る少女が消えた日。前編

「無理に歩かない方がいいかな?」
顔を上げると、心配そうなヒロヤの視線とぶつかった。
わたしは小さく首を振って、身体をまっすぐに立て直した。

「歩いてみます」
わたしはヒロヤにしがみつくようにして、一歩一歩ゆっくり歩き出した。

まずは廊下へ。
エレベーターホールへ。
エレベーターの中へ。

二人っきりのエレベーターの中で再びわたしたちは唇を重ねた。
あたたかい、気持ちいいキス。
でも、一度目のキスよりもっと深いキスだった。

そして、気づいた。
昨日のスポーツドリンクとタオルとキスはヒロヤからだった、って。

わたし達は先に進む。

この先に何が待っているんだろう。
でも多分…もう戻れない。

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