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Sincerely

第3章 夢見る少女が消えた日。前編

エレベーターを下りて、ゆっくり二人で歩く。いつの間にか改装が済んだばかりでまだ人気のないリハビリ病棟へとわたし達はやって来ていた。

わたしの心が小さな警鐘を鳴らす。
この警鐘に従えば、きっと引き返せた。
でもわたしは、気付かないふりをしてしまった。

「疲れた?少し休憩しようか」
ヒロヤはさりげなく近くの個室にわたしを誘った。


病棟の固い床と違って、この病棟は床がじゅうたん敷きになってて、二人でそのまま床に座り込んだ。
「昨日手術したばっかりだったのに、無理させたね。ごめん」
並んで座ったヒロヤが頭をなでてくれた。
顔を上げると二人の視線がぶつかる。
ヒロヤの顔が近づいてきて、またわたし達は深いキスをした。

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