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Sincerely

第4章 夢見る少女が消えた日。後編

言わない方がイイかもしれないけどね、と独り言のように呟いたアキヤさんはこう続けた。
「兄貴さ、奥さんも子どももいるんだ」


───やっぱり。
やっぱり、というかそれ以上だった。
知らずに済んでれば、と思う気持ちはあった。
だって、ヒロヤが何も話してくれなかったから。
きっと彼女さんとかいるんだろうってはわたしも思ってたから。

でも。
そういう事なら、
ヒロヤ本人から直接聞きたかった───!!


風の音だけが聞こえた。
泣きたかったのか怒りたかったのかすらもうわたしには分からない。
ただ黙って空と麓の町を見ていた。
でも、先ほどまでと違って、
もうわたしの目には色彩を持った風景には見えなかった……

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