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Sincerely

第6章 そして、わたしは嘘をつく。

でも、この日ヒロヤに会った事でわたしは。

わたしの存在のせいで傷つく人がいるのを。

身をもって、知ったんだ───


正門から少し離れた所に、ヒロヤの車が。
わたしが近づくと、窓が開いてヒロヤの顔が見えた。
「急でごめん。ちょっと頼みたい事があって」
「何…ですか?」
改まって言われるって事は、あまり楽な頼みではないだろう。
そしてこの勘は、当たらなくてもいいのに当たっていたけど…。

「嫁さんにバレた」

───やっぱり。
そういう方向性の事だろうなとは思ってた。

「で、そういう関係がないって嫁さんに言って欲しいんだ…」

勝手だな。
男の人って、保身の為には勝手で残酷になるんだ……
と、いう事は。

ゆくゆくこの勝手さと残酷さが、ヒロヤからわたしに向けられる日が来る───?

嘘をつく事になりそうだという事より、
その考えにわたしはゾッとした。

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