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Sincerely

第6章 そして、わたしは嘘をつく。

そういう意味では、きっとわたしも。

勝手で残酷な人間なんだ……


ちょっと車を走らせて、ヒロヤに連れて行かれたのは、落ち着いた雰囲気の喫茶店だった。
わたし達が店内に入った時に、明らかにわたしへ向けられた意識があった。
憎しみではない。
敵意でもない。
例えれば……

諦め───?

意識を向けた女性は、
わたしに向かって静かに会釈した。

「ユミコさん、ですね。はじめまして」

静かな声。
喜怒哀楽が見えない。
感情を殺す事に慣れてしまったような印象。
でも、彼女はわたしがどれだけ望んでも手に入れられない物を身に付けていた。

左手の───薬指に。

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