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Sincerely

第7章 8月の長い夜

頭の中がグチャグチャな所に、土を踏む足音が聞こえた。


「───ユミコ」

知ってる、笑顔だった。
わたしが中学生の時から見てて、好きになった笑顔。

「マサヨシさん…こんにちは」

気づかれたかな?
わたしが、色々抱えて考えて、思ってたの。
できれば、まだ気づかれたくない。
傷つけるにしても、まだその時じゃない気がするから───


「連絡しなくてごめん。もう、足…大丈夫?」
「うん、もう平気。運動とかも普通にやってるし」
笑顔、こわばってないかな。
受け答え、ヘンじゃないかな。
わたしの内面の混沌が彼氏───マサヨシに見えなくて良かった。
変わらない穏やかな笑顔で、彼はわたしを見つめていた。


……まるで、ヒロヤと出会う前のふたりのようだった。

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