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Sincerely

第8章 晩夏(なつ)の夜の悪夢(ゆめ)

当たらなくてよい予感だけ最近は的中している気がする。

ヒロヤの運転する車は、中心街を通り越して少し進んで、大きなシティホテルの駐車場に入って行った。
エスコートされるまま、建物の中へ。
制服姿のわたしは少しミスマッチな気がして、チェックインするヒロヤの背中を見ながら、観葉植物の影に身を潜めた。


「あんなに隠れなくてもいいのに」
二人きりのエレベーター。
クスクス笑うヒロヤ。
「なんかわたし…雰囲気浮いてる、って思ったから……」
小さく頬を膨らませる。
「堂々と振る舞う方が色々目立たないんだよ」
分からなくはない。
ない、けど───…


ヒロヤとの関係は堂々とできないのに───


「言葉と行動が矛盾しちゃうよ?
 不倫は…堂々とするものじゃないと思うけど」
わたしの言葉に、ヒロヤの背中がピクリと動いた。

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