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Sincerely

第8章 晩夏(なつ)の夜の悪夢(ゆめ)

エレベーターの中、ヒロヤとわたししかいなくて。
彼の押したボタンのフロアまでは、まだ少し余裕があって。
それでも何となくヒロヤに怖さを覚えて、わたしは動く密室の隅に逃げる。

───バン!
でも狭い密室。
あっさりとわたしは、ヒロヤの腕に閉じこめられた。
所謂、壁ドン状態。
ヒロヤが怖い。
すっごく……怖い。
言葉すら出ない。
だけど視線も逸らせない。
彼の顔が近づいてきて───

激しいけど、冷たいキスを───された……


薄暗い部屋。
なんでヒロヤがわたしをここまで連れてきたのか薄々分かっていた。
でもできる事なら、もうマサヨシを裏切りたくなかった。

「ねえ、ユミ」
わたしに背を向けてヒロヤが口火を切る。
「こないだ、買い物袋を下げて一緒に歩いてた男が…彼氏?」

マサヨシと一緒の所を、
見られた───?

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