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Sincerely

第9章 マリオネットの心

ヒロヤから恐怖と快感の両方を与えられたあの日。
身体はマサヨシを裏切ってしまった。
でも、初めて彼と繋がった夜の事は口にせず。
心まではヒロヤに屈さなかった。


明け方こっそり帰宅して、洗面所で鏡を見て愕然とした。
制服で隠れるギリギリの肌の上に、ヒロヤの噛みつくような唇の跡───


あれだけの事をされたのに。
ヒロヤの事をわたしは憎めないでいた。
理由付けなんてできない。
冷たいまなざしから時々覗いた苦しそうな瞳。
それを見てしまった───強いて言うなら、それが理由な気がした。

もしかしたら、あの瞳に捕らわれてしまったのかもしれない。


きっとわたしは、間違いなく深みにはまっている───
今までより、もっと。

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