テキストサイズ

BL短編

第8章 最後のお願い

ハンドルに頭を預け、顔をこちらに向ける和真兄は気まずそうだ。
当たり前だよな。

「気づいてたよ。」
なしにしようと口を開く前に告げられ、こっちが驚く。

「え...?」
目線が合うと和真兄は前を見つめた。

「気づいてたよ。でも応えられないの、わかるだろ?」
頭を撫でる手は優しいのに、和真兄は俺のものにはならない。

「うん、そうだね。」
当たり前だけど、やっぱり辛いな。


「何か、ひとつだけ、お願い聞いてあげるよ。出来ないようなことは駄目ね?」


本当に、どこまでも優しいひと。

「じゃあ...キスって言ったらしてくれるの?」

冗談で言ったお願いに、和真兄は否定も肯定せずに、上体を起こし俺のほうへ体を傾ける。

「か、かずっ...」

頬に柔らかいものが触れる。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ