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BL短編

第5章 罠に掛かるは甲か乙か


「お前変わったな。」
呆れたような顔で俺を見る目が嫌で嫌で。

「...ってない。俺は変わってなんかない!変わったのはお前だろ!ろくに連絡よこさないで!久しぶりに会ったと思ったらそんなスーツなんか着てキメてきて!女の香りなんかつけて!すっかり東京に染まってんじゃねえか!」

思っていたことが、全て口から出てしまい、居心地の悪さがさらに増してもう俺は耐えられなかった。

「マスターお金置いてくわ。」
財布から万札数枚を起き、逃げるように店を出た。

店を出るまで山下に話しかけられた気がするけど、もう俺の中ではどうでも良かった。


落ち着くために、忘れるために、大学のときに先輩に勧められて始めた煙草。
火をつけて煙を肺いっぱいになるまで吸い込んでも、ただただ、今は不味いばかり。

「俺が馬鹿だったんかな...?」
泣きそうになるのを歯を食いしばることで、ごまかす。もう何年も前のことが、こんなにも自分の中で整理できていないなんて、まるで女みたいで悔しくて仕方なかった。

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