BL短編
第5章 罠に掛かるは甲か乙か
ああ。だから、今聞こえる山下の声も幻聴だ。もう末期だ。
明日が土曜日で休みで良かった。こんな気持ちで仕事なんて手がつかない。
「無視すんじゃねえよ!康介!」
腕を後ろから思いっきり引っ張られて、振り向けば、山下がいて。
驚きすぎて声が出ない代わりに、堪えていた涙が出てしまった。
「なんで泣い...!」
「あ、れ、くそ。なんで、気にすんな。何でもない。何でもないから。」
泣きながら心配させないように笑う。拭ってしまえば涙は消えた。
「それより、なんで山下こっち来てんだよ。家帰るなら方向違うだろ。久しぶりすぎて道忘れたのか?高校以来だもんな。」
高校以来。
言ってから自分の傷を抉ったことに気付く。
山下との登下校を思い出してしまった。
なんなんだ、俺は。救いようのない馬鹿か。
「もういい、もういいから。」
山下はそう言うと俺の目を触れる。
また涙が溢れていたらしい。
「俺はっ....!」
苦しげな山下の顔が近づいてくる。
冷たい唇が俺に触れて混乱する。
「康介にそんな顔させるために戻ってきたんじゃない...!」
なんでお前まで泣きそうなんだよ。
明日が土曜日で休みで良かった。こんな気持ちで仕事なんて手がつかない。
「無視すんじゃねえよ!康介!」
腕を後ろから思いっきり引っ張られて、振り向けば、山下がいて。
驚きすぎて声が出ない代わりに、堪えていた涙が出てしまった。
「なんで泣い...!」
「あ、れ、くそ。なんで、気にすんな。何でもない。何でもないから。」
泣きながら心配させないように笑う。拭ってしまえば涙は消えた。
「それより、なんで山下こっち来てんだよ。家帰るなら方向違うだろ。久しぶりすぎて道忘れたのか?高校以来だもんな。」
高校以来。
言ってから自分の傷を抉ったことに気付く。
山下との登下校を思い出してしまった。
なんなんだ、俺は。救いようのない馬鹿か。
「もういい、もういいから。」
山下はそう言うと俺の目を触れる。
また涙が溢れていたらしい。
「俺はっ....!」
苦しげな山下の顔が近づいてくる。
冷たい唇が俺に触れて混乱する。
「康介にそんな顔させるために戻ってきたんじゃない...!」
なんでお前まで泣きそうなんだよ。