BL短編
第5章 罠に掛かるは甲か乙か
「嫌だ。」
話したくないって言ってるのに、なんで分ってくれないんだ。
「ヒロミと別れたんだろ?それを人づてに聞いたからもう1回チャンスが欲しくてここまでたんだ。そう簡単に帰れない。」
「待って、ヒロミってだれ?男?女?誰が別れたって?」
話が噛み合わない。なんだ?何が起きてる?
「大学のときから付き合い始めた彼女、ヒロミっていうんだろ?人づてに彼女出来たって聞いたから、だから俺は康介を諦めたんだ。男同士より、男女のほうが良いに決まってる。」
それは同感だ。同感だけど、ヒロミって誰。
「俺は山下のあと誰とも付き合ってないんだけど。お前の言ってる康介って誰?」
間が流れる。
「...まさかデマ?」
まさか。いやでもそのまさかとしか思えなかった。
今更デマだとわかった所でどうにかなる話でもなかった。
「ごめん。俺が康介にちゃんと確認してれば、今みたいな康介にならなかったかも知れないんだな...。」
待ってくれ。ちょっと待ってくれ。
さらっと受け流したけど、チャンスってなんだ。
そんな都合のいいこと、あるのか?