BL短編
第5章 罠に掛かるは甲か乙か
真っ暗な家に光を灯し、入って。と促すと深夜なのもあり小声で尋ねられる。
「おばさんと親父さんは?」
「親父は亡くなったよ。母さんはそれがショックで、痴呆が酷くなって、俺一人じゃ世話できなくなって。仕事も辞めたら生活できないしで。母さんには申し訳ないけど施設に預かって貰ってる。」
見る見るうちに山下の表情が曇る。
まあそうだろう。
「嫌な事聞いてごめん。本当に長いこと、時間が経ってるんだな...。」
「家に人呼ぶのも久しぶりだから、大したもてなしも出来ないけど。」
インスタントコーヒーを淹れ、はた、と止まる。
「山下ってコーヒーには何か入れるか?」
高校生のときはお互いジュースしか飲まなかった。今の俺は山下の好みを全然知らない。
「ああ、ブラックでいいよ。」
温かいコーヒーを手渡し、互いにマグカップに口をつける。
さっきのバーとは違う無言の空気が流れた。
「康介のこと、大事にしてきたつもりだった。彼女ができたなら俺は離れるべきだって、好きなのに別れを言うのは耐え難くて、言わないままなあなあにして。
ガキだった俺を許してほしい。傷つけてごめん。」
はっきりとした謝罪を告げられる。
「大人になった山下が忘れさせてくれるんだろ?」
この先に期待を込めて。
「おばさんと親父さんは?」
「親父は亡くなったよ。母さんはそれがショックで、痴呆が酷くなって、俺一人じゃ世話できなくなって。仕事も辞めたら生活できないしで。母さんには申し訳ないけど施設に預かって貰ってる。」
見る見るうちに山下の表情が曇る。
まあそうだろう。
「嫌な事聞いてごめん。本当に長いこと、時間が経ってるんだな...。」
「家に人呼ぶのも久しぶりだから、大したもてなしも出来ないけど。」
インスタントコーヒーを淹れ、はた、と止まる。
「山下ってコーヒーには何か入れるか?」
高校生のときはお互いジュースしか飲まなかった。今の俺は山下の好みを全然知らない。
「ああ、ブラックでいいよ。」
温かいコーヒーを手渡し、互いにマグカップに口をつける。
さっきのバーとは違う無言の空気が流れた。
「康介のこと、大事にしてきたつもりだった。彼女ができたなら俺は離れるべきだって、好きなのに別れを言うのは耐え難くて、言わないままなあなあにして。
ガキだった俺を許してほしい。傷つけてごめん。」
はっきりとした謝罪を告げられる。
「大人になった山下が忘れさせてくれるんだろ?」
この先に期待を込めて。