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BL短編

第8章 最後のお願い

引越し業者に全てを運んで貰って、二人で部屋を掃除する。

それも30分ほどで終わってしまって。

「ありがとう忍くん。これなら賃貸の引き渡しも直ぐに終わりそう。時間あるし、ちょっと待ってて。」


がらんとした部屋に一人取り残される。

「本当に行っちゃうんだなあ...。」

まだ和真兄の生活していた跡があるけど、次の入居者が決まる頃には新しい畳に、新しい壁紙にと、和真兄がここにいた証は何も残らなくなってしまう。


寂しい、なんて言える立場じゃないのは分かってるから、頬を平手で二回叩いた。


「ただいまー。コーラで悪いけど。」
帰ってきた和真兄は、両手に1本ずつコーラを持って、空いた指でカシュッと栓を開けてみせる。

小学生くらいのときにこれを初めてみて、和真兄すごい!ってずっと真似をしていたけど、結局できず終い。

「ありがと。」
片方のコーラを受け取り口に含めば、シュワシュワと気持ちいい炭酸が喉に流れて、喉が乾いていたことに気付かされた。

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