BL短編
第8章 最後のお願い
二人で、微炭酸になるくらいゆっくりとコーラを飲みながらこの部屋の最後のひとときを過ごす。
「そろそろ、引き渡しかな。」
「あ、じゃあ俺帰るね。」
名残惜しいけれど、邪魔しちゃいけない。
「そっか。今までありがとうな。」
「うん。和真兄もね。」
パタンと部屋を出て、自分の家に戻り、服を脱いだ。
これでよかった。
そう思う反面、これじゃだめだと思う。
後悔しない?と自分に問いかけてみたら、後悔しそう。という答えしか出なくて。
少しでもよく見られたくて、さっきよりはオシャレに気を遣った服をきて、もう一度和真兄の家に向かった。
しばらくしたら、賃貸の契約元のおじさんと和真兄が出てくる。
「忍くん?」
「それでは私はこれで。長い間、綺麗に使って下さりありがとうございました。」
「あっ、はい、ありがとうございました!」
なんとなく、車に乗り込み立ち去る会社名入りの普通車を見送る。
「どうしたの、忍くん。」
聞いてくる和真兄はどこまでも優しい。