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予期せぬ光秀の仕草に、楓はビクンと身を震わせた。しかし、優しく抱き締められた温もりに声をあげて泣きはじめた。

どのくらいたったであろうか。楓が落ち着くまで、光秀は優しく包んでいた。

「勤めとはいえ、辛かったであろう。」

優しく穏やかな声が楓を包む。

「お屋形さまに話を聞いた。楓は気丈なおなごゆえ帰蝶さまのために心を押し殺しておるだろうことは察しがついた。
まだ、生娘であると聞いてせめて自分が楓の相手になりたいと申し出た。昨夜は驚かせてすまなんだ。」

楓は顔をあげ、光秀を見つめる。想像もしていなかった言葉が光秀から発せられていた。

「初めてとは怖きもの。それも意に添わぬ相手であればなおのこと。お屋形さまの側室になるのであれば構わぬが、勤めでやらねばならぬことではない。
心通わすもの同士でなければ、苦痛ばかり残るものよ。
わしは楓を慈しんで参った。
光秀が相手では不満かの？」

楓は何度も首を横に振る。

だからといって、どうしていいかわからず俯いていた。