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光秀は楓を抱き締めながら、むせび泣く楓の背中をさすり続けた。

楓が落ち着いた頃を見計らって声をかける。

「楓よ久しぶりに、碁でもささぬか。」

落ち着いた楓は顔をあげ、光秀に笑いかけた。

「久しぶりにございますな。昔はよく手解きをしていただいた。楓も強うなりましたぞ。手を抜かれては光秀殿も危ういやも。」

泣きはらした顔で無理に笑う楓だが、少し気持ちが晴れてきたようだ。

「では今宵手合わせ願おうか。わしもまだ表の勤めがあるゆえ夕刻また参ろうぞ。」

「用意をしてお待ちしております。」

光秀は優しく頷き、もう一度楓を抱き締めて、部屋をあとにした。

楓は自分の心が穏やかに落ち着いていくのを感じながら光秀の影を見つめていた。