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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 その時、嘉門は思ったのだ。娘は何も自分が背負った宿命を哀しんでいないわけではない。ただ、誰をも恨むまいと懸命に自分に言い聞かせて生きてきたのだろう。憎しみは憎しみを呼び、誰かを恨んで生きていても、空しいだけだから。
 彼は、父や父の愛した側室をひたすら恨んで生きてきた母がこの世の誰よりも不幸だと知っている。

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