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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~

第2章 壱

 その本を読んでみたいという知的欲求よりは、その本を共通の話題、つまり話の種にして娘ともっと親しくなりたいという極めて俗なというか、下心のあるものだったのだけれど。
 娘は嘉門の本心なぞ知らぬげに、ふわりと微笑む。
「お応えするのは簡単ですけど、初めてお話する方には少し恥ずかしいのですが」
 娘のはにかんだような笑顔があまりにも可愛らしくて、嘉門はつい身を乗り出した。

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