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無口な彼

第1章 よくわからない




「おい!田口ー!」



「お、おう!」


帰る気満々だった俺は、肩に掛けたばかりの鞄を机に下ろして周りにたむろっていた友達らに小さく言葉を発した。


「わりぃ、なんか呼ばれてる。行ってくるわ。先に帰ってて!」


「お、おう。」


俺の発した言葉に、友達は少し戸惑っている様子。

それもそのはずだ。

俺を呼んでいるのは、あの篠原で。
なんてったってあの篠原で。

俺ですら状況がわかってないんだ。

こいつらが戸惑うのも無理もない。


だってなんてったってあの篠原だろ?
なんで俺?


疑問を頭の中に繰り広げながらドアに歩み寄ると、こちらをずっと見ていた篠原と目が合う。



あ、やっぱこいつ綺麗な顔。
凄いかっこい。


男の俺でもそんな事を思ってしまうほど、篠原の顔は魅力的だ。


そんなこと、今に知ったことじゃないが、こんな近くで見たことなんてなかったからか、見惚れてしまった。


おっと危ない。

ハッとして、杉瀬にありがとうと手を降る。

じゃーなと手を振り返した杉瀬は、俺が一緒に帰るつもりだった友達たちと教室から出ていってしまった。


放課後の教室にはもう俺と篠原しかいなくて、少し気まずさを感じる。


教室の中と言っても、篠原はドアの外から教室に入ってこようともしない。

からといって、口を開こうともしないのだ。


なんだよこいつ!
俺、ウズウズしちゃうだろ!


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