
無口な彼
第1章 よくわからない
痺れを切らしてしまった。
だって篠原が何も喋らず俺の顔をずっと見るから、我慢の限界ってもんがある。
「し、篠原?俺になんか用?」
率直に聞くと、篠原は無表情のままグイグイと教室に入ってきた。
驚き後ずさりする俺には構わず、ガラガラとドアを閉め始める。
「し、篠原?」
もう一度名前を呼ぶと、篠原はまた俺の顔をジッと見つめた。
な、なんだよコイツ。
そんな綺麗な顔で見つめんな照れる。
ちょっとだけ心の中でおどけてみたが、戸惑いを隠せない。
切れ長の綺麗な目が、ジッと俺を見つめているのだ。
綺麗なのは目だけじゃない。
眉毛も鼻も口も輪郭も、凄く綺麗なのだ。
う、わ。
なに、俺。
篠原に見つめられてなにドッキドキしてんだ。
いや確かにこんな綺麗な人には免疫がないけれど、まぁ綺麗な人じゃなくても免疫はないが。
篠原は男だ。
落ち着け、俺。
ふっと息をつき、篠原から目を逸らしてみた。
よし、完璧。
「篠原!」
気を取り直して、もう一度名前を呼ぶと篠原は少しだけピクリと動いた。
