無口な彼
第1章 よくわからない
180cmはあるであろう長身の篠原を見上げながら、
おお、良かった。
ちゃんと動くんだな。
なんて馬鹿な事を思った時だった。
「田口。」
篠原の発した声に固まってしまった。
な、なななななんなのほんと。
やばいこの人、低音セクシーボイスってまさしくこれ。
声までステキだ。
「田口、瞳?」
「そ、だけど。」
確かめるように俺の名前を呼びながら篠原がゆっくりと距離をつめ始めるのを見て、俺は堪らず後ずさってみる。
しかし、それは叶わなかった。
ガタッとなんとも間抜けな音がして後ろを見ると、なんと机があるのだ。
このままじゃ、机と篠原に板挟みになってしまう。
「は?、、、え?」
理解できない。この状況が。
なんだこれ。
まるで篠原に攻められてるみたいじゃん。
いやいや、笑えない。
「し、篠原?おいっ」
気づいたら鼻先が触れるくらいの距離に、篠原の綺麗な顔が近づいていて。
俺が小さく、息を吸い込んだ時だった。