無口な彼
第1章 よくわからない
ほんと、なにこれつらい。
頭の中は何気真っ白。何がなんだかわからない状態で、ただひたすら頭を回してみる。
あ、やばいグワングワンする。
回りそうもない頭で、男にキスされたのだという事実になんとも言えない焦りを感じた。
ぼんやりする。マジ危ない。
俺を支える筋肉質な腕を見つめること何秒だろう。
何秒だかはわからないが結構な時間だと気づき、俺はハッとした。
「なっ!なんのつもりだ篠原!」
思いのほか大きな声が出たが気にしない。
だって今、そんなことを気にしてられない。
まだグワングワンする頭で、必死なのだ。
まだよろめくが、自分の力で篠原から離れて距離を取る。
二歩くらい、だけど。
強く睨むと、そこには口角を上げ細い指で唇をなぞる篠原が目に入った。
あ、やばいかっこい。
すんごい色気。羨ましい。
「って、違う!なんだよ今の!」
一瞬飛びそうになった思考をたぐり寄せ、もう1度声を上げると、
篠原はやっと言葉を発した。