無口な彼
第1章 よくわからない
「キス。」
「は、あ!?」
恥ずかしげもなく、そして表情も動かさずに篠原が発した言葉に
俺の顔には湯気がでる程の熱が集まってしまった。
俺の、俺の、俺の
「は、はじめてだったんだぞ!」
俺の叫びに、篠原が目を少しだけ目を見開いたのがわかる。
ああ、恥。
俺、恥ずかしいよママ。
そう。こんな年になっても、まだキスも未経験だったのだ。
それを、男に奪われるなんて思ってなかった。
なんだ、なんなんだ、篠原。
あ、遊び心が芽を出したからってしていいことと悪いことがある。
そしてなんで俺をわざわざ呼んてまで、俺にキスしたんだ。
「あー!ほんとなんなんだ、、、!」
「だから、キス。」
「知ってるわ!!」
なにこの綺麗な人。
話し通じない。
なんかもういっぱいいっぱいで肩で息をし始めた俺を、篠原は変わらない表情で見つめる。
「もう、ほんとやめろ、、。」
そんな綺麗な顔で見るな。
ほんと、ドキドキなんだけど!
キッと睨むと、篠原の無表情が目に入る。
あ、もうやだ。綺麗すぎる。お前はなんだよ。人間ですか?
この短時間で、何回篠原に見惚れたことだろう。