無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第3章 弐の巻
「親の私が見ても、二人が互いを心から必要とし合っているのは判りました。本当に傍で見ている者までもが幸せな気持ちになれるような、そんな恋人同士だったのですよ。これまでは内裏(うち)の女官という女官、女房と浮き名を流されていた主上もこれで漸く、真に心を通わせる相手がおできになったと、母として安堵しておりました。桐壺御息所は身分こそ低いが、教養もあり心映えも優れた素晴らしい女性でした。私もあの方ならば、主上を支えて、そのお力になってくれると期待していた矢先、あのようなことに―」