無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第1章 《序章》
花びらを全身に纏いつかせた少女は春の季節にはふさわしい紅梅(こうばい)襲(がさね)の衵(あこめ)を着ている。肩まで伸びた黒髪はすんなりとして艶(つや)やかで、美少女とまではゆかずとも、十分に愛らしい。
もちろん、まだ九歳の少女はまだ己れの容姿には無頓着であるし、平素から女の子の歓ぶひいな遊びや貝合わせよりは漢籍を読むのが好きとあれば、余計にそういったことには疎い。同じ歳頃の女の子と遊ぶよりは、庭に出て虫を探したりするのが好きという変わり者の姫だ。
もちろん、まだ九歳の少女はまだ己れの容姿には無頓着であるし、平素から女の子の歓ぶひいな遊びや貝合わせよりは漢籍を読むのが好きとあれば、余計にそういったことには疎い。同じ歳頃の女の子と遊ぶよりは、庭に出て虫を探したりするのが好きという変わり者の姫だ。