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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

「私は、もう随分と長い間、大宮さまとお話させて頂きました。大宮さまのお健やかなお顔を拝し奉ったことでもありますし、今日はこれにて失礼させて頂きます」
 公子が控えめだれど、きっぱり言うと、帝の視線が初めて公子を捉えた。
 その酷薄なまなざしに射竦められた刹那、公子の身体は金縛りに遭ったように動かなくなった。冷え冷えとした視線に見つめられると、身体だけでなく心の芯までもが凍ってゆくようだ。

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