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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

―まるで蛇に睨まれた蛙。
 公子は我が身のことなのに、何故か他人事のように今の状況を認識していた。それほどに、公子にとっては受け容れがたい現実であったのだ。
「母上」
 帝がひと言強い語調で促すように言うと、安子は仕方なくといった様子で立ち上がった。
「公子どの、また近い中に姿を見せて下さいね。今日は久方ぶりに心愉しい刻を過ごせました。ありがとう」

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