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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

「さりながら、皇太后さまがそのように仰せでございます」
 なおも女房が言うと、帝は先よりも更に険しい声で突っぱねた。
「良い」
 低い声に、老いた女房はハッとしたようだ。
 几帳の向こうで慌てて顔を伏せ、平伏した。
「承知仕りました」
 ひと言だけ残し、逃げるように下がった。まるで、これ以上、その場に居れば、帝の機嫌を損じたとばっちりを食うと言わんばかりだ。

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