テキストサイズ

無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 通常、深窓の姫君と言葉を交わす場合、たとえ相手が帝であろうと、御簾越しに行うものである。成人女性と男が御簾や几帳といった隔てもなしに直接言葉をやりとりするなど、女性の方に対してはなはだしく失礼なことで、女性を軽んじていることになるのだ。
 それゆえ、皇太后が女房に急遽、座をしつらえるように命じたのだが、それに対し、帝はにべもなく返す。
「その必要はない」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ