無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第3章 弐の巻
あの事件以来、帝と皇太后の間はどうやら上手くはいっていないようだというのが世間の見方だ。また、皇太后の実兄―つまり帝には実の伯父になる関白左大臣、藤原道遠ともまた不仲であると云われている。帝がまだ元服以前、道遠は摂政として万機を決裁していた。
が、成人後、帝は自ら親政を行い、関白の出る幕はない。元々、何のために藤原氏が代々、娘たちを入内させ帝の后としてきたか―、それは取りもなおさず皇室の外戚、つまり娘が生みし皇子を皇位につけて天皇の外祖父として政治の実権を握るためである。
が、成人後、帝は自ら親政を行い、関白の出る幕はない。元々、何のために藤原氏が代々、娘たちを入内させ帝の后としてきたか―、それは取りもなおさず皇室の外戚、つまり娘が生みし皇子を皇位につけて天皇の外祖父として政治の実権を握るためである。