無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第3章 弐の巻
「俺が祐子を愛するようになって、祐子は多くの女たちからの妬みを受けた。殊に弘徽殿などは陰で相当に酷い嫌がらせを繰り返していたようだ。あ奴は俺が何も知らぬと思うておるが、俺は全部知っていたさ。愚かにも祐子に酷い仕打ちをすればするほど、あれに対する俺の心が冷めてゆくのも知らずに、あ奴は祐子を苛めた。それでも、祐子は何も俺に言わなかった。いつも笑っていた。花のような儚げな外見に似合わず、芯の強い―そして心優しい女だった。俺は祐子が他人の悪口を言っていたのを聞いたことがない」