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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 ちなみに弘徽殿というのは弘徽殿女御藤原要子(ようし)のことである。要子は右大臣藤原道嗣の一の姫であり、帝が元服の際、〝御添伏〟に立った姫であった。帝より六歳年長であり、既に二十五歳になるが、いまだに御子には恵まれていない。いや、帝の後宮には要子だけでなく他にも入内した女御が幾人かいる。いずれも大納言以上の家格の娘で、飛ぶ鳥を落とす藤原氏の娘ほどではないにせよ、それなりの後ろ盾を持っていた。

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