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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 その科白の意味を計りかねていると、帝がフッと笑う。その笑みは皮肉げでもなく、ひどく淋しげに見えた。
「祐子も―亡き桐壺も同じことを言った」
 帝の脳裡にありし日の祐子の面影が甦る。
 ある朝、帝の寝所に召されての淑景舎(後宮の御殿の呼び名の一つで、祐子はここを住まいとして与えられている。淑景舎のまたの名が桐壺であったことから、祐子は〝桐壺更衣〟と呼ばれた)への帰り道、突然の雨が降った。

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