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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第1章 《序章》

 自分があの年上の姫を振り向かせたいのだということに、少年は気付いていない。〝年下の従弟〟でもなく、〝帝〟としてでもなく。ただの一人の人間としてあの姫に見て貰いたい。
 なのに、あの少女ときたら、彼を見れば、説教じみた乳母のような科白を口にし、顔を赤らめさえしない。彼の取り巻きの若く美しい女房たちは、いつもたった八つの子どもに過ぎない自分が笑いかけただけで、頬を染め恥じらうというのに。

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